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テック 2017.09.08

液体のように動く砂が開発者の好奇心を刺激!「流動床インターフェース」【CEDEC2017】


ゲームなどのデジタルコンテンツの開発者向けイベントCEDEC2017会期中にTwitterの検索ボックスに「CEDEC」と入れると「砂」とサジェストされるほど話題になった「流動床インターフェース:液体のようにふるまう砂を用いた インタラクションシステム」。会場でも体験者の列が常にできていました。今回は、容器に入った砂がスイッチを入れると水のようになるこのインタラクションの体験レポート、そして開発者の的場やすしさんに伺った開発過程と今後についてお届けします。

まずは体験動画から!

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このように、ポコポコ泡がたっている砂場に手を入れると、少し粘度がある液体の中に手を入れるようにすっと砂の中に手が入っていきます。さらにビニールボールを中に沈めようとするとポコリと浮いてきます。しかしスイッチを切ると固い砂の塊に戻り、手は抜けなくなり、ボールは砂の中に埋まってしまいました。そして再びスイッチを入れると先ほどと同じように水のような振る舞いに戻ります。

さらに、長靴を履いて砂に足を入れる体験もできました。

最初は確かに砂の上に立っていたのに、スイッチを入れた途端に氷が無くなった沼に落ちていく感じが。そしてスイッチを切るとその沼が急に固まったように、足を動かすのが難しくなってしまいました。

こちらの動画では、VRヘッドマウントディスプレイをつけたボートに乗るシュミレーターの例が紹介されています。この装置を使えば体験者が体を動かしたとき水上と同じようにボートが揺れるので、体験者の体重移動や波の影響を大掛かりな装置無しで表現できるとのこと。ほかにも、エンターテイメントや舞台装置、デジタルサイネージなどへの応用が提案されています。

仕組み

この装置、砂の下から大量の空気を送り込むことで液体のように振る舞う「流動床(または流動層)」という現象を用いたものです。この現象は、高温の砂を用いた焼却炉や、研磨、粉体輸送など産業向けでは使われていましたが、エンターテイメント向けへの利用はされていなかったということで、的場さんが開発をしました。

先の「スイッチを入れる」「スイッチを切る」というのは送風機のスイッチの事で、空気の吹き出しが止まれば即座に流動化が止まり砂に戻るというのが特徴です。

この現象は、原理的にはいろんな砂で可能ではあるが、普通の砂を使ってしまうと埃が飛び散ってしまうため、今回の展示ではムライト(セラミックの種類)による粒度のそろった人工砂を使用しているとのこと。筆者の個人的な感想としては、色が異なる砂を使えば見ても楽しいものになりそうですし、(特に展示では送風機からの熱で砂が温かくなっていた事もあり)お湯のように入れる砂風呂があったらぜひ浸かりたいなとも思いました。

開発の経緯

開発のきっかけは、的場さんが2016年の春にYouTubeで「流動床式焼却炉」についての動画を見たところから。小規模のものはすぐできたそうですが、大きなものを設置する場所の確保と特許周りの処理に半年ほど時間がかかったそうです。場所についてはものつくり大学の菅谷諭教授の協力で設置する空間を得て、年末には一畳弱の装置(砂を1トン使用)を完成。


本装置の開発者、的場やすしさん

丁度年末に発表募集があった情報処理学会のシンポジウム「インタラクション2017」(
2017年3月2-4日)にてインタラクティブ発表をしたところ、複数の賞を受賞しました。サマーソニック2017のグリコブースでは本装置を使ったアトラクションを出展、今も実用化に向けて複数の話が動いているそうです。

液体との違いも

一方で、下記の写真のように、砂の表面に模様が残ることも。

液体ならば異なる液体も撹拌すれば混じるところですが、こちらはサンドピクチャーのように様々な模様ができています。
また、底面から空気を送っているので、例えば手を中に入れた場合、手の上には空気が送られないため、上の砂は流動床現象は起きず液体のような振る舞いはしなくなります。
このように、液体と全く同じ振る舞いをするわけではなく、砂特有の挙動もあるようです。こうした砂の特性を踏まえ、今後も研究開発をしていきたいと、的場さんは話してくれました。

なお、今回のインタラクションシステムですが、経済産業省の「Innovative Technologies+2017」受賞技術に採択され、2017年10月27日(金)から29日(日)の3日間開催されるDCEXPOに展示されることになったそうです。興味を持った方はぜひ体験してください。

(関連リンク)
CEDEC2017 公式ページ
流動床インターフェース:液体のようにふるまう砂を用いた インタラクションシステム
http://cedec.cesa.or.jp/2017/session/GD/s592244f4bff6b/


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