「ビデオゲームのお約束を捨てよ」-VRゲーム『ヘディング工場』の開発事例-【CEDEC 2017】

8月31日から3日間にわたって開催されたCEDEC2017ではVRに関するさまざまな講演が行われました。
今回は、ジェムドロップ株式会社の北尾 雄一郎氏と増田 幸紀氏により行われた「過去のお約束を捨てることがVRの始まり ~ PlayStation VR ヘディング工場のゲームデザインと演出」についてレポートしていきます。

ヘディング工場とは?


『ヘディング工場』は2017年2月にPlayStation VR専用ソフトとしてリリースされたタイトルであり、コントローラーを使わずに頭だけを使う点が特徴のゲームです。日本以外ではアジア版がリリース済みで、欧州北米版及びSteam版は現在準備中とのこと。

ヘディング工場 PV

https://www.youtube.com/watch?v=tTw9CvNFDE0

『ヘディング工場』には、表のコンセプトと裏のコンセプトがあった、と語ります。たとえば、「誰でも遊べるVRゲーム」は表のコンセプト。初めてのVR製作で無理をしないという、のは裏のコンセプトです。

そして「一番台数の出ているHMD向けにリリースする」という方針からは、PC向けのVRデバイスの場合はユーザーによってスペックにバラツキがあるため環境が統一されているPSVR向けにした、という点を挙げていました。


コンセプトから導き出された方針として、コントローラーやUIを使わないHMDでしかできないようなゲーム性を目指したとのこと。「世界観としては現実世界を描いたVRコンテンツが多いが、せっかくならと非現実な世界をテーマに選んだ」と北尾氏。


開発に要したのは丸一年。開発では一番最初にOculus Rift DK2で試作を行いその年のTGSで展示してロケテストをしたところ、ゲーム性や酔いの部分でお客様からの反応が良かったとのこと。PSVRの試作機が来たタイミングで再度試作を行ってその後本制作に移ったと述べていました。


試作を進めていく過程でUIや演出、酔いや現実世界とVR空間における違和感など様々な問題が発生したため一度ゲーム製作における過去のお約束を捨てる必要があったと北尾氏。

過去のお約束を捨てる、アート編

ここからは増田氏に移りアート部分で行ったことについて語りました。

一般的な3Dゲームにおける画面の下半分はほぼ地面であり、これをVRで再現するよりはもっとVRの体感を上げたかったため地面を排除し空間に浮いているようなレイアウトにしたと増田氏。下側の空間に通路やNPCを配置してみたところ、狙い通りぐるぐると見渡すようなプレイヤーが多かったとのこと。

移動カメラに関しては自動移動する際の移動速度を極力抑えることと、左右カーブや上下移動の変化を10~20度以内に収めるという2つの酔い対策を行ったと述べていました。また、坂道の移動やイベント発生といった部分ではカメラを強制的に動かしがちであるがこれをVRでやると酔う原因になってしまうので、カメラの動きはプレイヤーの自由にしたと増田氏。

立体感を出すためには、通常のゲームと同じようにビルボード(一枚板)で作ってしまうとVRで見た時に板であることがバレてしまうためしっかりと立体物を作る必要があるとのこと。

過去のお約束を捨てる、ゲームデザイン編

ここからは北尾氏に戻り、ゲームデザインの話に移ります。

VRの世界を満喫するためにロードやセーブ・メニューといった既存のゲームで使われている概念を排除したとのこと。「開発中に社内でオプションや決まったステージからプレイできる機能を入れた方がいいのでは?という声があったが、1つでも途中からそういった操作を入れると違和感が出て現実に引き戻されてしまうため徹底的に排除した」と北尾氏。

結果としては文字の無い世界設定と見た目のビジュアルがうまく絡み合い、ストーリーに関してもゲーム中で語られることが無いため、ユーザーによって違う解釈ができるゲームになったとも述べていました。

VRを最大限に使いユーザーに仮想世界を体験させるための手段は「現実世界ではありえないことを体験させない」ことを意識しつつも、「現実ではありえないことを体験してもらう」ことであると北尾氏。

体験させない「現実世界ではありえないこと(違和感のある体験)」は通常のゲームにおけるポーズなどの時間停止、空中にウィンドウが出てテキストが書かれているなど現実世界では起きえない状況でありこれらが出てきた瞬間に違和感を感じてしまうとのこと。体験してもらう「現実世界ではありえないこと(違和感のないありえない体験)」についてはヘディング工場の場合、簡単操作でボールを跳ね返してオブジェクトを破壊するという爽快感や現実では実現不可能な空の世界を旅するといった部分が当てはまると述べていました。

まとめ


予算や人員、スケジュールに制限があったことで各セクションごとにアイディアで解決しようと動けたほか、過去のお約束を捨てたことで工数を減らすことができたとのこと。しかし制限のあるスケジュールだったためPSVRのローンチのタイミングを逃してしまい、開発スケジュールを含めたプロモーションなどが今後の課題と北尾氏。


北尾氏は実際にVRゲームを制作してみての所感として「VRのハードウェアは日々進化しており、まだまだゲームデザインが定まっていない部分が大きい。そのためVRコンテンツを制作をする場合はチーム一丸となって取り組み、特にアート系のスタッフとの連携は重要。VRならまだまだ新しいゲーム体験を発明できる余地があるのではないか」と述べ、セッションを締めくくりました。

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この記事を書いた人

  • 専門3年です。ニコ動/VOCALOID/ニコつくWeb担当他/自作PC/ハコスコ/CardBoard/Unity勉強中/デジギア全般/gearVRを持ち歩いてVRを広める活動をしてます。

    Twitter:@doron0328