【CEDEC2016】「2つのゲームを同時に開発しているようなもの」バイオ7の開発者が語る”全編VR対応”

8月24日から3日間にわたって開催されたCEDEC2016ではVRに関するさまざまな講演が行われました。

株式会社カプコンの技術研究開発部 高原和啓氏は、「『バイオハザード7 レジデント イービル』におけるVR完全対応までのみちのり、歩みの中の気づき」という講演を行いました。『バイオハザード7 レジデントイービル』(バイオ7)は、全て一人称視点で進行しますが、ゲーム全編をVR対応しています。

https://www.youtube.com/watch?v=kRDS8tUtTDM

高原氏は、VR完全対応モード(PlayStation VRでゲームをするモード)と通常モード(テレビ画面でゲームをするもの)の違いを中心に、開発時の気付きについて共有しました。

この記事では、VR版と通常版がどのような点で異なるのかを中心に紹介します。

CEDEC バイオ

オープニングイベントの有無

CEDEC バイオ

ゲームの開始時には通常、ストーリーをほのめかし世界観に引き込むための映像(オープニングイベント)が流れますが、オープニングイベントにも通常版とVR版とで違いをつけている、と高原氏は言います。

・通常版では、オープニングイベント有り
・VR版では、オープニングイベント無し

オープニングイベントは物語への没入感を高めるために必要なものですが、VR版ではカットされています。『バイオ7』のオープニングイベントは、主人公が目を覚まして、起き上がるというシーン。VRでやると、自分が動いていないにも関わらず視界が大きく揺れて酔ってしまいます。結局、ストーリーに直接関係のないイベントは極力省いて、酔いが発生する可能性のあるシーン自体を削減するようにした、とのこと。

歩行走行時のカメラ・移動速度

CEDEC バイオ

一人称視点のゲームでは、歩いたり走ったりすると画面を揺らす演出をすることがあります。その演出と移動速度はVRで気をつけなくてはいけません

・通常版では、画面を揺らし、移動速度は約6.1km/h
・VR版では、画面を全く揺らず、移動速度は4.2km/h

VRでは、視界を揺らしてしまうと、かなり酔いやすくなります。VR版では画面は完全に揺れないようにしているとのこと。また、三人称視点と一人称視点では、体感の速度に違いがあり、通常版の速度(約6.1km/h)をそのままVR版で試してみると、かなり早く感じられるため、速度を落としています。

※Oculus社が公開しているベストプラクティスガイドでも、移動に関しては、等速直線運動でも出来る限り低速にすることが望ましいとされています。『バイオ7』ではどの程度まで低速にすればいいのか検証が行われた結果、4.2km/hという速度に結論づけられたと見ることができます。

インタラクトイベントにおけるカメラ移動

CEDEC バイオ

ゲーム内の物体に干渉するインタラクトイベントにも違いがあります。ゲーム中には、ピアノに触れようとするとピアノが「バタン!」と勝手に閉じて驚かせる演出がゲーム内にあります。ここでは通常版とVRのカメラワークならではの都合による違いがあります。

・通常版では、ピアノに触れようとすると、モーション再生によってカメラが動き、手が伸びてきてピアノが閉じる演出が発生します
・VR版では、ピアノに触れようとすると、モーション再生や手が伸びる演出はされず、ピアノが閉じる演出が発生します

VR体験者の視点であるカメラの位置を無理やり変えてしまうことをなくすため、演出を省いているとのこと。

インベントリ

CEDEC バイオ

ゲーム内に表示されるイベントリ(メニュー)の表示形式にも違いがあります。

・通常版では、イベントリは画面の右側に表示されます
・VR版では、イベントリはプレイヤーの前の空間に表示されます(下図参照)

通常版の右側に表示されているイベントリをVRで表示させると、画面の端っこにイベントリが常に置いてあって、見るために目が痛くなるという印象を受けたことを紹介しました。そのため、VR版では画面の中央の空間上にイベントリを表示させています。

CEDEC バイオ

追従する懐中電灯の移動のタイミング

CEDEC バイオ

プレイアブルキャラクターの移動や向きの変更は、コントローラーのスティックを倒して行います。バイオ7では手にライトをもっています。プレイアブルキャラクターが向きを変える時に、ライトがキャラクターの正面にくるように追従しますが、その追従するライトのタイミングに、VR版ならではの違いがあります。

・通常版では、キャラクターが向きを変え始めてから、少し遅らせてライトを向ける
・VR版では、キャラクターが向きを変え始めるのと同時に、ライトを向ける

本来の人間の動きからすれば、見たい方向に体を向けてから、手に持ったライトを動かすため、通常版の設定の方がリアルに近い動きになっています。同じことをVRでやると、ライトが若干遅れてくる動作が、「fps(フレームレート、描画頻度を表す)が下がった時のもの」「レイテンシー(遅延)が発生している時のもの」と同じような感覚を受け、逆に没入感を損なってしまった、と高原氏は言います。

ライトシャフト・プレイヤーの影の有無

CEDEC バイオ

ライトシャフトとプレイヤーの影の有無についても最適化のために違いがあります。

・通常版では、ライトシャフトとプレイヤーの影があります
・VR版では、ライトシャフトとプレイヤーの影がありません

複雑なリアルタイムイベントの演出方法

CEDEC バイオ

複雑なリアルタイムイベントにおいても違いがあります。例えばキャラクターが持っているビデオカメラを通して、見た風景をテレビ画面に写したり、テレビ画面に砂嵐を写す、といったさまざまな演出が行われてきましたが、その演出方法もVRでは違いがあります。

・通常版では、今まで通りの演出
・VR版では、VR内に画面を表示させてそこに映像を映す(下図参照)

CEDEC バイオ

VR空間に砂嵐やビデオカメラから見た映像を取り入れると、酷く酔ってしまったり目が痛くなってしまったとのこと。どうしようもなく必要なイベントについては、VR上に大きなスクリーンを出して、映画を見ているような形で再現しています。こうすることによって、テレビのノイズもプレイヤーに負担なく再生できるようになりました。2Dで表現する方法は360度の体験が特徴であるVR的には禁じ手。VRでやる意味があるかと疑問を持ったと高原氏は言いました。

『バイオ7』の通常版とVR版との違いは、今回、高原氏が紹介した以外にも細かいところでいろいろとある模様。細かいところまで調整が必要となってくる点ではまさに、”2つのゲームを同時開発しているようなもの”と高原氏は表現しました。

CEDEC バイオ

全編VRで楽しむことのできる『バイオ7』は2017年1月26日に発売予定です。

CEDEC2016に関する講演レポート、体験記事はこちら

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この記事を書いた人

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    Shunri

    慶應義塾大学在学中の4年生。大学では経済、プログラミング、ビジネス、サービスデザインを中心に学んでいます。思い立ったが吉日!ってな感じで、水泳、サッカー、フットサル、将棋、ボードゲーム、ポーカー、自作パソコン、カメラ、アニメ…今はもちろん”VR”!広く深くを目指して‼

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