「360度カメラはVRのためのものではない」GoPro参入の理由をCEO語る―CES2018に見るトレンド第1回

年明けにラスベガスで開催されたCES2018では、VRに関するデバイスもさまざまなものが展示されました。今回から数回に分けてそのトレンドを連載で追っていきます。

360度カメラといえば、グリグリ動かして見ることのできる360度写真や動画を撮影する機材、というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。360度動画はVRデバイスでの視聴と相性も良く、並べて語られることも多くなっています。

360度カメラ―360度動画―VR、その前提を大きく覆す動きが起きています。360度カメラは360度カメラをVR以外に使う道を、一方実写VRは360度ではなく180度へ。そしてカメラのあり方を変えていくリアリティキャプチャへ。年明けにラスベガスで開催されたCES2018では、その動きを見ることができました。

360度カメラの新しい使い方“後から切り取り” GoProが本腰

1年前のCES2017では中国メーカーを中心に様々なメーカーが360度カメラを展示していました。筆者の見たところCES2018ではその数は減りました。特に新しく参入する企業はあまり見当たりません。

注目したいのが360度カメラとコンテンツの関係です。360度カメラといえば360度コンテンツというのが一般的でしたが、2017年から現れた使い方として「アングルを後から決められるカメラ」としての使い方が注目されつつあります。

具体的には、撮影した360度動画をスマートフォンやタブレットなどで見て360度をぐるりと回しながら、アングルを決め「自分が見せたい視点を後から決める」編集ができるというものです。通常のカメラでは撮影時にアングルが固定されます。360度カメラでは視点を決める必要がないからこそ、編集時に好きなアングルを選ぶことができます

GoProの参入

CES2018でこの「後からアングル決定」機能を前面に押し出していたのが、アクションカメラで知られるGoProです。GoProは、2017年に360度カメラFusionを発売しました。Fusionは、前面と背面にそれぞれ約200度の魚眼レンズを備えた360度カメラです。

・5.2K(5228×2624)30fpsの解像度
・スタビライズ機能を備え、ジンバルなしでの撮影
・特殊なハウジングなしで5mの水深までそのまま撮影可能

とGoProらしく、アクション性を重視した設計になっています。日本では2月に88,000円で発売予定です。


GoPro Fusion

GoProは2015年に360度動画の編集を行うKolor社を買収しており、Fusionのアプリでその技術を活かしています。レンズ間の継ぎ目をなくすスティッチングと呼ばれる工程の質が高く継ぎ目が全く分からない自然な360度動画が出力されます。

同社はCES2018に合わせてFusion向けの新機能「OverCapture」を発表しました。

OverCaptureは、360度映動画をもとに、画角を切り取って動画編集を行う「アングルを後から決める」機能です。スマートフォン・タブレット向けのアプリのアップデートによってこのOverCaptureを実装しました。

GoProの担当者による、「アングルを決められないシチュエーション向け」という説明は非常に納得感のあるものでした。まさにGoProがこれまでアクションカメラを提供してきた、スポーツなどの激しいシーンとは非常に相性が良いと考えられます。そこにこれまで培ってきたスタビライズ技術やKolorのスティッチング技術などを組み合わせて質の高い360度動画を素材として提供しています。

今回、Fusionのハンズオンとして記者向けに用意されたのはエクストリームシーンの撮影でした。CES2018のメイン会場の脇では期間中終日車のドリフト音が鳴り響いているコーナーがありました。

それはBMWの展示でした。プロレーサーが運転する車に試乗できるという体験展示とGoProがコラボ。車内にFusionを取り付けた状態で360度撮影を行い、その後記者がOverCapture機能を使って編集してみる、というもの。

助手席に乗った筆者は通常のジンバルの撮影を最初試みていたため2度ほど頭をぶつけましたが、たしかにあの車内ではアングルを変えて通常撮影をすることは難しい状況。後から運転手の方向を選んだり、同時に走っていた別の車をアップにしたり、とOverCapture機能を楽しみました。

その場で急いで作成した動画がこちら(一発編集だったのでもう少しじっくり編集すればよかったと後悔)

https://www.youtube.com/watch?v=Ia7E8f7KH70

苦境に立つGoProだが、360度カメラの可能性には確信に近いものも

GoProといえば、アクションカメラで一躍注目を集め上場したものの、最近では業績不振が続き、ドローン事業からの撤退なども発表しています。2017年にはVR部門の閉鎖のニュースもある中で、2018年年初のCESではFusionを大きく推しています。この件について、GoProのCEOニック・ウッドマン氏に取材を行ったところ意外な回答が返ってきました。

「360度カメラは、カメラが向かうべき方向だと思っている。VRのためのものではない。消費者は撮りたいものを綺麗に撮れる“魔法のようなカメラ”を求めている」

とし、VRコンテンツを作るためのものではなく、後からアングルを変えて編集のできるカメラとしての360度カメラへの期待に自信を見せました。

また、アクションカメラのGoPro HEROシリーズも継続して展開することに関しては、「360度カメラがメジャーなトレンドになるにはまだ時間がかかる。消費者にはFusionとHEROの選択肢を残したい」と語っています。


GoPro CEOのニック・ウッドマン氏

すでに複数社が注目

なお、この「アングルを後から決める」機能は、2017年4月にGoProがFusionの発表を行ったときに初めて披露されました。その後、2017年9月に中国のInsta360が発売したInsta360 ONEには「自由編集機能」として搭載されました。

話題の360度カメラ「Insta360 ONE」徹底レビュー バレットタイム撮影の実力とは&? | Mogura VR

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MoguraVR

CES2018では、ほかにも小型の4K360度カメラ「Rylo」が展示されていました。Ryloは、強力なスタビライズをウリにしており、自転車などの激しい動きでの撮影もソフトウェアで補正します。

このソフトウェアでの編集として、紹介されたのがやはり「自由に編集できる機能」でした。スタビライズにより落ち着いた動画で、好みのカメラワークを決めて編集ができます。Ryloはすでに米国で販売中で499ドルです。

第2回はこちら

実写系VRの新スタイル「180度動画」とその先―CES2018に見るトレンド第2回 | Mogura VR

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この記事を書いた人

  • 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。VRジャーナリスト。
    VRが人の知覚する現実を認識を進化させ、社会を変えていく無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。VR/AR業界の情報集約、コンサルティングが専門。また、国外の主要イベントには必ず足を運んで取材を行っているほか、国内外の業界の中心に身を置きネットワーク構築を行っている。

    Twitter:@tyranusii