キーワードは「真似る」  VRアニメでキャラへの共感を得る工夫

ハリウッドでCGアニメ『アンツ』や『マダガスカル』のディレクターだったEric Darnell氏がCCO(最高コンテンツ責任者)を勤めるVRアニメーションスタジオBaobab Studiosは、去年『INVASION!』、『ASTEROIDS!』の2つの360度CGアニメーションを発表しました。これらの製作時に得た知見、特にどのようにキャラクターとの共感を得る工夫をしているか、その方法について以下で紹介していきます。

※なお、本記事は『ASTEROIDS!』の内容に関する記事になります。『ASTEROIDS!』はGear VR向けに無料で配信されていますので、Gear VRをお持ちの方はぜひ視聴してから読み進めていただくことを推奨します。

『INVASION!』で得た知見を2作目に反映

Baobab StudiosのCEOのMaureen Fan氏と、CCOのEric Darnell氏が手がけた360度CGアニメ『INVASION!』はクロエと呼ばれる白いうさぎが、侵略してくるエイリアンを追い払うために仲間たちと力を合わせるという話です。全部で5つのエピソードから成るシリーズの第1作です。映画化も決定している作品になります。Gear VR、PlayStation VR、Oculus Rift、HTC Vive、スマートフォン等さまざまなプラットフォーム向けに無料で配信されています。

https://www.youtube.com/watch?v=gPUDZPWhiiE

『ASTEROIDS!』は2作目となる作品です。1作目と同じエイリアン、マックとチーズが自分たちの宇宙船の中で日々任務についている様子が描かれています。『INVASION!』が見るだけのコンテンツだったのに対して、『ASTEROIDS!』では曲がったチューブの腕を持つ召使いロボットを操作して2人をサポートできます。Gear VR、Daydream向けに無料で配信されています。

『ASTEROIDS!』はただインタラクションができるというわけではなく、サポートを通して体験者に2人のキャラクターへの共感を生み出す制作が行われました。

Darnell氏とFan氏は、ゴールはコンテンツに参加して体験者に思いやりを引き出すことだと以下のように述べています。

「『INVASION!』から『ASTEROIDS!』へ進化していく中で、クロエが人々にどれだけ愛されているかを知ることができました。私たちはクロエを愛し、共感してくれる人たちへ、その気持ちをなんらかのインタラクションで表現できる方法を提供したいと思いました。」

『ASTEROIDS!』を指揮したDarnell氏は、ハリウッドでCGアニメ『アンツ』や『マダガスカル』のディレクターをしていましたが、現在はBaobab StudiosでVRアニメの製作を行っています。

キャラクターと体験者が行動をマネることで共感を生み出す

『ASTEROIDS!』は3Dアニメ映画の伝統的な表現と、体験者のインタラクションを混ぜたユニークな試みです。ただ、このインタラクションは、ストーリーを分岐するためにあるのではないとDarnell氏は述べています。「物語を分岐させるのではなく、感情を分岐させます。」

Fan氏は、『INVASION!』を体験している人がこちらに近づいてきて、目の前にいるクロエの動きを真似することに気づきました。

「体験者はクロエが自分たちの動きをまねしていると思い込み、彼女の動きをまねしていました。」

こうした観察結果から、Barnell氏は『ASTEROIDS!』で”ミラーリング”というアイディアを思いつきました。たとえば、自分の頭を左、右と傾けると、登場する犬のPeasも同じように頭を傾けます。これは、たとえそのことに気づかないとしても、「キャラクターが体験者をまねしているとよりその物語に引き込まれる」という『INVASION!』を通して得られた考えに基づいています。

子供向けのアニメにもかかわらず、『ASTEROIDS!』の物語はあなたの近くの誰かを失うという重い題材を扱っています。これらのキャラクターや物語、そして共感を重視した『ASTEROIDS!』を体験した人は感情的にも大きな反応があり、中には泣き出す人もいました。

Baobabでは物語そのものだけでなく、製作の工程をどのように改善していくのかも検討しています。例えばフラット(紙上)なアニメーションから3D空間に変換するといった手間のかかる方法を避けるために、独自のVRストーリーボードを製作しています。Darnell氏は、製作の内部工程もより良くしていくことができると述べています。

(参考)

ASTEROIDS! is a Playful Act of Intergalactic Compassion – (英語)

http://vrscout.com/news/asteroids-intergalactic-compassion-baobab/

この記事を書いた人

  • あつぽん

    日本でMRシステムの開発に携わった後アメリカへ渡り、VR/MRシステムを企業へ導入するための検討・開発に従事。現在は日本在住。

    人間の能力そのものを拡張させるテクノロジー「ヒューマンオーグメンテーション」のコンセプトに惹かれ、その界隈の動向に強い関心を持っています。その中で実用化フェーズにあるVR/MRの盛り上がりをより広い範囲へわかりやすく伝えていきたいと思っています。

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