今後、スマートフォンでは、多くの人々がARを体験できるようになります。スマートフォン画面を通して見た景色に、自由にデジタルオブジェクトを置ける時代がやってきます。
Googleは多くのユーザーにこうした体験を提供するため、Webブラウザで体験できるARコンテンツを模索しています。最新のプロトタイプである「Article」では、Webページに画像と同じように埋め込まれた3Dモデルを閲覧したり、スマートフォンカメラを通して現実世界に3Dモデルを表示したりといった機能が盛り込まれています。
Webページに組み込める3Dモデルビューワー
Articleは、PC・スマートフォンを問わずあらゆるブラウザで利用できる3Dモデルビューワーです。
3Dモデルは、pngやgifの画像と同じようにWebページに組み込むことができます。モデルの下に表示される拡大ボタンを押すことで、3Dビューワーを全画面表示することができます。
Webページをスクロールしていくと、3Dモデルがインタラクティブであることを示すため、表示されたモデルは緩やかに回転します。
画像をクリックで再生
対応デバイスでAR表示
ARと3Dモデルを組み合わせると、ユーザーはより現実的なスケールで3Dモデルを体感することができます。例えばWebをサーフィンして見つけたモデルを部屋の中に置き、どれだけ大きいかを歩き回りながら眺めることができるようになります。
ARCoreなどAR機能に対応したスマートフォン/タブレットでArticleを読み込むと、モデル下部にARボタンが追加で表示されます。
ARボタンをタップするとデバイスのカメラが起動し、カメラを通して現実世界が見えるようになります。地面に表示された十字線を一度タップすることで、3Dモデルがそこから飛び出し、現実的なスケールで3Dモデルが表示されます。
3Dモデルはただカメラ映像に重ねて表示されるだけでなく、影や周囲の照明などを推定して、より現実と融合させて表示することができます。
Googleは使いやすいARシステムを研究する中で、小さなインタラクションがARの仕組みを分かりやすく提示すると考えました。例えばカメラが起動し、床平面の識別をユーザーが待つ間、画面には床の平面に描かれたような傾いた円形UIが表示されます。
こうしたインターフェースを通して、ユーザーは“物理環境に溶け込んだオブジェクト”(Diagetic UI)としてARインターフェースの概念を体感することができます。
プロトタイプ開発環境が公開
プロトタイプで使用されている宇宙飛行士の3Dモデルは、Googleが提供する3Dモデル共有サイト「Poly」に投稿されているものです。Polyの多くのモデルは、クリエイターのクレジットを表示すれば複製や改変を許諾するクリエイティブ・コモンズCC-BYライセンスで提供されています。
Articleの3D部分はWeb GLを扱いやすくするjavascriptライブラリ「Three.js」で作られており、インタラクションやアニメーションをスムーズにするためパフォーマンスを意識して構築されています。
Articleの2D部分は、既存のライブラリと最新のWebツールで開発されました。レスポンシブデザインやタイポグラフィなどサイトの見た目を整えるために、フレームワーク「Bootstrap」が用いられています。
Web ARの可能性は膨大
Google AR and VRチームは、ブログで以下のように述べています。
「WebにはARの膨大な可能性があります。ショッピング、教育、エンターテインメントなど各分野で活用されるでしょう。Articleはプロトタイプの一つに過ぎず、光の推定によるシームレスなモデル表示、モデルの特定の位置にDiagetic UIを表示するなど、まだ様々な探究点が残されています」
開発中のブラウザについてより学び、プロトタイプ開発を試したい開発者は、GoogleのDevelopサイトを参照してください。
ARの市場分析では、5年内にAR産業が9兆円規模を上回るとの予測も発表されています。今後スマートフォンの高性能化も含め、多くの一般層がAR技術を日常的に活用する日も近いかもしれません。
(参考)
Augmented reality on the web, for everyone / The Keyword(英語)
https://www.blog.google/products/google-vr/augmented-reality-web-everyone/