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AR/MR 2019.10.27

続々登場「AR/MRグラス・スマートグラス」まとめ(2019年10月版)

昨今、AR(拡張現実/Augmented Reality)やMR(複合現実/Mixed Reality)技術が進歩し、さまざまな企業が「AR/MRグラス」や「スマートグラス」として開発・発表しています。海外イベントでは、デバイスの展示が多く行われるなど、盛り上がりを見せています。

本記事では「AR/MRグラス」と「スマートグラス」の違いや、2019年10月時点で各企業が発表・開発しているデバイスを紹介します。

目次

1.「AR/MRグラス」と「スマートグラス」の違いは?
2.AR/MRグラス
2-1.HoloLens 2
2-2.Magic Leap One
2-3.NrealLight
2-4.GLOW
2-5.ThinkReality A6
2-6.Facebook/AppleもARグラスを開発中
3.スマートグラス(ディスプレイで表示するもの)
3-1.Google Glass
3-2.Vuzix社製スマートグラス
3-3.Moverio
3-4.DigiLens Crystal
3-5.AceReal One
3-6.Focals
4.スマートグラス(音声中心)
4-1.Echo Frames
4-2.Bose Frames

「AR/MRグラス」と「スマートグラス」の違いは?

最初に本記事で使う用語を整理します。「AR/MRグラス」と「スマートグラス」は、どちらも頭に装着し、ディスプレイを通して現実にデジタル情報を表示するメガネ型のデバイスです。この2種類の大きな違いは「現実空間を認識する機能が備わっているか・いないか」です。

ARグラス/MRグラスは、現実空間にある壁や床などをカメラやセンサーで認識し、デジタル情報を重ねて表示します。周囲の環境を認識するため、3Dオブジェクトを床や机の上に配置したり、壁に貼り付けたりといったことが可能で、物体がまるでそこにあるかのように見ることができます。ARグラス/MRグラスの中にはコンシューマー向け展開も予定されているデバイスもありますが、現在は業務用途での利用が多いです。空間を認識するためのカメラやセンサーが複数搭載されていることが多いです。

一方、スマートグラスは現実を認識する機能を備えておらず、視界の一部に情報を出すものがほとんどです。外見はカメラやセンサーを搭載していない分、デザインが洗練されており、メガネそのものに見えるデバイスも多く存在しています。スマートグラスはビジネス・コンシューマー向けとして展開が進められています。また、スマートグラスの中には、ディスプレイを使った表示機能を一切もたず、音声のみ搭載しているものもあります。

ARグラス/MRグラスとスマートグラスは、機能面で見るとARグラス/MRグラスの方ができることが多く、優れています。スマートグラスは搭載している機能が少ない分、小型軽量化が進み、比較的安価で軽量設計です。

大まかに分類すると以下のように表のようになります。

機能面

現時点の用途

価格

ARグラス/MRグラス

現実を認識して表示

比較的ビジネス向け

比較的高い

スマートグラス

情報のみを表示 or 音声ガイド

ビジネス・コンシューマ向け

比較的安い

そうした中、2019年はMRグラスでありながら低価格、軽量、小型を実現した「NrealLight」や「GLOW」が発表されたり、日本市場で海外製デバイスの展開が進むなど、ARグラス/MRグラス・スマートグラス分野に注目が集まっています。

AR/MRグラス

HoloLens 2

HoloLens 2」は、マイクロソフトが2016年に発売したMRデバイス「HoloLens」の次世代機です。ヘッドセット単体で動作し、操作はスマートフォンやコントローラーを使わずハンドジェスチャーで行います。HoloLensは、これまで産業利用を中心に作業効率化やそれに伴う経費削減など、業務フローに革命をもたらすデバイスとして実験的な導入が多数進められています。

初代HoloLensからの改良点として、「2倍以上の視野角・解像度を実現」「ハンドトラッキングの改善」「視線追跡機能の追加」「装着の快適性を向上」などが挙げられます。また、HoloLens 2は産業向けにフォーカスして設計されており、産業用にすぐ使用できるアプリの追加や、ヘルメットに組み合わせるなど企業別にカスタマイズすることも可能です。

HoloLens 2のデバイス単体(商用版)の価格は3,500ドルです。日本国内向けの価格は2019年10月時点では発表されていません。予約は2月25日より開始されていましたが、現在は公式サイトからプレオーダー案内ページへのリンクは削除されています。

HoloLens 2のまとめ情報はこちらです。(2019年3月掲載)

Magic Leap One

Magic Leap One(マジックリープ ワン)」は、米スタートアップ「Magic Leap(マジックリープ)」が発売したMRデバイスです。ヘッドセット、有線でヘッドセットと接続されるプロセッサとバッテリーを内蔵したユニット、そして手に持つコントローラーの3つから構成されています。

Magic Leap Oneの操作は、ハンドトラッキングをはじめアイトラッキング、コントローラー、音声認識と、さまざまな方法があります。ハンドトラッキングを使用する場合は、手の関節まで認識できるのも特徴です。

Magic Leap Oneはアプリによって部屋の構造をかなり詳細に反映するものもあり、「家具の裏にキャラクターが歩いていって、隠れて見えなくなる」「ベッドの縁から床にキャラクターが落下する」といった、まるで現実にそのキャラクターがいるような表現も可能としています。

Magic Leap Oneは2018年8月に開発者向けのクリエイター版が発売、価格は2,299ドルです。アメリカなど数カ国で販売されていますが、2019年10月現在、日本への一般販売は行われていません。しかし、NTTドコモがMagic Leap Oneの国内展開を掲げ取り組みを進めているため、日本国内で発売される日もそう遠くないかもしれません。

Magic Leap Oneのまとめ情報はこちらです。(2019年9月掲載)

NrealLight

NrealLight(エンリアルライト)」は中国のスタートアップNreal Ltd.が開発しているMRグラスです。MRグラスで88gという軽量さ、低価格、メガネ型のデバイスとしては広めの52度の視野角が特徴です。動作にはQualcomm Snapdragon 855を搭載したスマートフォンが必要です。

NrealLightは、先ほど紹介したHoloLensやMagic Leap Oneに比べて低価格、軽量、小型を実現した代わりに機能制限があります。位置トラッキング(SLAM)を行うためのカメラの数はHoloLensやMagic Leap Oneと比べると少なく、実際に体験すると精度は劣ります。コントローラーもスマートフォンを使用した簡易的なもので、ハンドジェスチャーやアイトラッキングも搭載されていません。

NrealLightの価格は499ドル。他のMRグラスに先駆けて2020年初旬に一般消費者版が発売予定です。

ソフトウェア開発者向けキット「NrealLight Developer Kit」は2019年9月末から順次提供開始されています。NrealLight Developer Kitにはデバイスと外付けユニット、コントローラーが付属しており、価格は1,199ドルです。

NrealLightのまとめ情報はこちらです。(2019年9月掲載)

GLOW

GLOW」は、香港に拠点を置くARデバイスのスタートアップMAD Gazeが開発するMRグラスです。形状はNrealLight同様にサングラス風のデザイン、重量はNrealLigの88gをしのぐ、75gという軽量設計です。視野角は45度。公式サイトによれば、操作はハンドジェスチャー、音声認識、そしてUSB-Cでスマートフォンと接続して行います。

2019年10月現在、MAD GazeはGLOWのクラウドファンディングをIndiegogoにて実施中です。価格は41,438円(26%オフ価格)から、発送は2019年12月からを予定しています。

ThinkReality A6

「ThinkReality A6」は、レノボが主に作業員向けデバイスとして開発中のARグラスです。ThinkRealityは法人向けの展開を想定したブランドで、ハードウェアと(クラウドに依存しない)ソフトウェアの両面から構成されています。操作は音声認識やハンドジェスチャー、付属の簡易的なハンドコントローラーを利用した操作も可能とのことです。

レノボは、ThinkReality A6を着用することで「作業効率の向上やミスの減少、複数の作業チームの円滑な連携などが実現できる」と説明しています。執筆時現在、ThinkReality A6の価格やリリース日などの詳細は公表されていません。

Facebook/AppleもARグラスを開発中

大手企業のフェイスブックやアップルもARデバイスに関する発表や報道が多数行われています。

フェイスブックは、2019年9月末に開催されたOculus Connect 6にて、ARグラスを開発していること、その基盤となるARクラウドシステム「LiveMaps」の研究開発に取り組んでいることを発表しました。

なお、公式発表ではありませんが、米メディアCNBCによれば、フェイスブックはARグラスをコードネーム「Orion(オリオン)」と呼び、2023年から2025年の発売を目指していると報じています。また、サングラスブランドのレイバンやオークリーの親会社であるLuxxotica(ルクソティカ)とのパートナーシップを結び、Orionを共同開発中である、としています。

一方、アップルは米国特許商標庁に120度以上の視野角を持つARデバイスの特許を出願しています。特許からは、2018年アップルが買収したARディスプレイ開発のスタートアップAkonia Holographicsの技術を進化させたものが用いられていると推測されます。

また直近では、ARグラスに関連すると思われるRGB深度センサーに関する特許出願や、高精度なモーションキャプチャ技術を有する企業の買収を行っています。

アップルのARグラスに関する特許の取得状況や噂など情報まとめはこちらです。(2019年6月掲載)

スマートグラス(ディスプレイで表示するもの)

Google Glass

「Glass Enterprise Edition 2」は、グーグルが2019年5月に発表した法人向けスマートグラスです。本製品は2017年に発表されたものの、その後続報が途絶してしまった「Glass Enterprise Edition」の後継モデルです。

Glass Enterprise Editionは、工場や倉庫、医療機関などでの現場作業をアシストするデバイスとして設計されていたことから、同様の分野での使用が想定されていると推測されています。

発表の翌月には、大手国際輸送物流会社DHLのサプライチェーン部門が、「Glass Enterprise Edition 2」の業務導入を発表しています。倉庫でのピッキング作業へ導入し、作業中でもハンズフリーでの情報チェックが可能になり、正確性や効率性向上が見込めるとのこと。

Glass Enterprise Edition 2の価格は999ドル。販売は一般向けには行われず、パートナー企業から購入する必要があります。

Vuzix社製スマートグラス

AR技術を有する企業Vuzix Corporationは、スマートグラス「M400」や「Blade」を展開しています。

M400

M400は、QualcommのAR/VRデバイス専用のチップセット「XR1」を搭載した、産業向けスマートグラスです。遠隔作業支援や倉庫・空港での荷物搬入といった場面での採用が想定されています。

本製品はソフトウェアなどにおいて、Vuzixの既存のMシリーズ製品(M300M、300XL)と互換性があります。OSはAndroidを採用し、USB-Cケーブルで接続することができます。公式ストアでの価格は214,500円(税込)です。

Blade

Bladeは、コンシューマー向けとしても展開されているスマートグラスです。スマートフォンを介したデータの送受信と表示が可能。メールや画像、テキストメッセージなどのデータを空中に表示して閲覧したり、道案内を受けるといったことができます。またAlexaに対応し、スマートグラスからAlexaを起動、ハンズフリーで操作し、音声と視覚で情報を受け取ることも可能です。公式ストアでの価格は99,000円(税込)です。

Moverio

エプソンは2019年5月にスマートグラス「Moverio BT-30C」を発表しました。USB Type-CのDisplayPort Alternate Mode対応のAndroidスマートフォンと接続して動作します。スマートフォンの画面を目の前にシースルーで表示することが可能です。

本製品のディスプレイには有機ELが採用。水平解像度は720pでリフレッシュレートは30Hzです。公式ストでの価格は54,978円(税込)です。

DigiLens Crystal

「DigiLens Crystal」は、アメリカでARハードウェア開発を行うスタートアップDigiLensが開発するスマートグラスです。スマートフォンとUSB Type-Cで接続して使用し、CPUやバッテリーなどは搭載されていません。

DigiLensによれば、DigiLens Crystalは「5G通信と音声入力の実装により、ゲームアプリに高い適性を有する」としています。また対応するアプリを使用した、教育目的や工場、物流チェーンでの活用も想定しているとのことです。

AceReal One

AceReal One」は、サン電子株式会社が展開する産業向けスマートグラスです。同社はスマートグラスAceReal One、クラウド型業務支援アプリ「AceReal Apps」、そしてソフトウェア開発キット「AceReal SDK」が一体となっているサービス「AceReal」を提供しています。産業用機器・設備のメンテナンスなど、屋内外での作業を支援するために設計されています。

AceReal Oneは産業用途に最適化されており、特に屋内外のフィールド作業に耐えられるようにデザインが設計されています。IP54準拠の防塵・防滴規格に対応しており、産業用のヘルメットにも装着可能。外気温40度の環境でも動作し、視界を遮りにくい設計ととクリアレンズを採用しています。

Focals

Focals」はカナダを拠点とするスタートアップNorthが展開する、通常のメガネと見分けがつかない見た目が特徴のスマートグラスです。

FocalsはスマートフォンとBluetooth接続して使用。レンズ部分にはプロジェクターが内蔵されており、スマートフォンに届いた通知や天気、時間などの確認が行えます。加えて、配車サービスのUberを呼んだり、Alexaと接続も可能です。音楽配信サービスSpotifyとの連携や音声メモなどの機能も搭載しています。

スマートグラス(音声中心)

Echo Frames

Echo Frames」はアマゾンによる、同社のAIアシスタント「Alexa(アレクサ)」を搭載したスマートグラスです。アマゾンの実験的な製品カテゴリ“Day 1 Edition”に属する製品です。Alexaの使用に特化しており、Alexaとコミュニケーションするためのスピーカーとマイクが内蔵されています。情報を映し出すディスプレイは搭載されていません。

本製品の重量は31g。スマートフォンとBluetoothで連携して動作します。連続3時間の音声再生に対応し、充電は75分程度で完了します。商品ページによれば対応OSはAndroidです。2019年10月現在、iOSには未対応です。

「Echo Frames」の価格は約179ドル、導入期間終了後は249ドルになる予定です。執筆時点、販売は招待者を対象に北米限定で行われています。

Bose Frames

「Bose Frames」は、音楽機器メーカーのBoseが展開する音のARを実現するサングラス型のスマートグラスです。耳から入ってくる情報や経験を拡張することを主な目的としています。左右のつるには小型スピーカーを搭載しており、デバイスから音を聴きながら周囲の音も把握することができます。

また、GPSを活用した位置情報機能とモーションセンサーによりユーザーの進行方向を検知、音でさまざまな情報を提供します。たとえば「frames」を着用したユーザーがレストランを視界に入れると、レストランの情報を音声で聞く、といったことが可能です。

「Frames」の価格は27,500円(税込)、オプションとして交換レンズ(偏光レンズが3,850円、非偏光レンズが2,750円)が選択・購入できます。


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