現実に3DCGのオブジェクトを置く拡張現実(AR)や複合現実(MR)を実現するためのヘッドセットとして、マイクロソフトのHololensやMeta社のMeta 2、Magic Leapなどが開発されています。しかし、HoloLensの販売価格は約3,000ドル、その他のARヘッドセットも1000ドル以上と、Oculus RiftといったVRヘッドセットと比較すると価格が高いです。
中国のスタートアップ企業であるDreamworld Vision社は、350ドルのARヘッドセットを開発していると発表しました。
Dreamworldの開発するARヘッドセット「Dreamworld Glass」
Dreamworld Vision社には10人の従業員がおり、現在までに200万ドルを調達しています。規模としてはマイクロソフトやMagic Leap、Metaと比べると小さいですが、現在1000ドル以上するARヘッドセットを350ドルで発売するとしています。
Dreamworld初となるARヘッドセットは「Dreamworld Glass」と呼ばれています。米メディアUploadVRの記者が体験する機会がありましたが、写真撮影が禁止されていました。従って、製品の写真はありませんが、文章でのレポートとなります。
記者は2種類のヘッドセットを体験しています。
1つは、広い視野と基本的なトラッキング(詳細は不明)を実現する小さくて軽いモデルです。2つめはかなり大きく、深度センサー「Over the Counter」とカメラを搭載して、外部センサーを使わずにポジショントラッキングを行っていました。
大きいと言っても、Meta 2やHoloLensと比べると小さく軽量に思えました。その理由として、単体で動作するヘッドセットではなく、USB-Cコネクタでアンドロイドスマートフォンと接続して使用するヘッドセットであることがあげられます。
ジェスチャーを交えたデモを体験
デモでは、3種類の簡単なデモを体験しました。1つめは、コンテンツのメニューを選択するものでした。3つの小さな黄色の四角形が目の前に表示されそのうちの一つを選択します。選択する際は、自分の手を顔の前に出してアヒルの口を真似るようにジェスチャーをします。Dreamworld UIではこれが「クリック」のアクションでした。
選択画面では、人の脳のホログラフィックモデルを投影するアプリか、ビデオプレーヤーを起動するかを選択できます。
脳のモデルを投影するアプリは、いくつか分かれているパーツが組み上がるのを順番に見えていくコンテンツでした。脳のモデルは空間に固定されているように見え、ヘッドセットがポジショントラッキングしていることが確認できました。
ビデオプレーヤーを選択するといくつかのビデオを表わすパネルが表示され、そのうちの一つを選択して再生しました。下記の動画では、Dreamworldの担当者が光を遮るためにヘッドセットの目の前に黒いボール紙を被せている様子が分かります。
ポジショントラッキングはまだ開発途中
デモを体験しているとジッター(乱れ)が発生することがあり、トラッキングが安定しないことが気になりました。後日、担当者からジッターはソフトウェア上のバグで既に修正済みだと連絡がありましたが、トラッキングにはまだ問題があると思われます。
一方、視野角はHoloLensなど他のARヘッドセットよりも広い印象を受けました。多くのARヘッドセットは狭い視野角で小さな四角形に切り取られたような見え方ですが、Dreamworldのヘッドセットは切り取られた感じを受けないぐらい広い視野を実現していました。
光学系はMetaとよく似ていて、ヘッドセット上部のディスプレイの光がレンズに届き反射することで表示されていました。
発売時期と価格
Dreamworldによると、2017年末のホリデーシーズンには限定的ながらも出荷をする予定です。最終的な価格はまだ決まっていませんが、350ドル以下にしようとしています。これは、現在入手可能なHololensの開発者キットが約3,000ドル、Meta 2が950ドルであることから、性能次第ではありますが、もし本当にこのような低価格で発売すれば魅力的なヘッドセットになると考えられます。
このARヘッドセットは6月に始まるCES Asiaで正式に発表される予定です。
(参考)
Dreamworld Is Making AR Glasses That Connect To Your Phone For Under $350 – (英語)
https://uploadvr.com/thes-ar-glasses-connect-smartphones-keep-prices-350/