【詳細レビュー】価格299ドル、Acer製マイクロソフトのMRヘッドセットの実力はいかに

5月11日にマイクロソフト主催のカンファレンス「Microsoft Build 2017」が行われました。その中でマイクロソフトは2種類の新しいVR開発キットの予約を開始しました(アメリカ及びカナダ在住者向け)。開発キットに含まれるVRヘッドセットは、Acer製(299ドル)もしくはHP製(329ドル)で、発送は2017年8月を予定しています。

本記事は米メディアRoad to VRの記者がBuldカンファレンス上でAcerヘッドセットの体験とマイクロソフトの担当者に多くの質問をした内容をMogura VRにてまとめたものです。

Acer VRヘッドセットとPCの最低動作スペック

ヘッドセットスペック

  • 2x LCDディスプレイ、解像度:1440 x 1440(片眼)
  • ディスプレイのリフレッシュレート:90Hz(ネイティブ動作)
  • 2x 対角2.89インチディスプレイ
  • ディスプレイユニットはヒンジ機構を持つ
  • 画角は水平95度
  • 3.5mmジャックによるオーディオアウト、マイクをサポート
  • HDMI2.0とUSB3.0を一つのケーブルでPCと接続
  • インサイド・アウト方式のトラッキング
  • 以下のセンサーを含む:加速度、ジャイロ、磁器計、近接
  • 寸法(L x W x H):195.8 x 94.8 x 106.59 mm

開発者用PCの最低動作スペックは以下の通りです。

コンシューマー用PCの最低動作スペックは以下の通りです。

ヘッドセットデザイン&快適性

Acerのヘッドセットは350gと、Oculus RiftやHTC Viveと比較して軽量です。頭に装着する重さが軽くなることでVRへの没入感を向上させています。ヘッドセットは「Halo Style」と呼ばれる一巻きの固めなヘッドストラップで顔の前方に固定されます。

また、ヘッドセットをフリップアップして顔の上部にヘッドセットを上げることができます。この機構により、VRを体験中にちょっと休憩したり、飲み物を飲むときにヘッドセットを外す手間なく現実を確認できます。


今回の体験では、5分から10分で終わるデモコンテンツをいくつか試しただけなので、長時間装着した際の快適性は判断できませんでした。しかし、おでこ部分のパッドはとても快適で装着中に煩わしく感じることはありませんでした。1回だけ、頭の後ろ側の締め付けがきつく感じることがありましたが、ストラップをきつく締めすぎたか、ストラップの位置が下過ぎたかもしれません。ストラップの脱着には、最初は少し戸惑いましたが、数回試す内に慣れてすぐに自然に脱着できるようになりました。ストラップを締める動作は、スノーボードのビンディングを締めるのに似ていて、外す際は写真上の赤いボタンを押すとロックが解除されます。


青色で少し安っぽいプラスチックの外装で軽量なヘッドセットはおもちゃっぽさもありますが、装着性は犠牲にしていないデザインでした。300ドル未満という価格の中でヘッドセットのどの部分にコストをかけるか、Acerの戦略は良く考えられています。もし、これ以上安くしようとした場合は装着性も犠牲になる可能性が高いです。

描画&オーディオ品質

AcerのMRヘッドセットは片眼1440 x 1440ピクセル、リフレッシュレートが90HzのLCDディスプレイで構成されています。ディスプレイに格子模様が見えてしまうスクリーンドア効果は確認できず、表示されたテキストはとても読みやすいです。

描画品質とレンズの品質はRiftやViveと比べて良くない印象です。レンズはフレネルレンズを使用しており、公式の水平画角は95度とされています。体験時に一番良く見える位置で装着すれば気にならないかもしれませんが、周辺部は多少歪みが発生しています。さらに、体感の視野角もRiftやViveと比べると狭い気がしました。これらの原因の一つは低品質なレンズにあるかもしれません。また、LCDディスプレイ自身もRiftやViveに使われているOLEDディスプレイよりも悪く感じました。(編集注:原文ではどのような点がOLEDよりも悪かったという言及がありませんでした)


オーディオに関しては、内蔵マイク、ヘッドフォンがないことに驚きました。今回試したデモのどれもが音声に対応していませんでしたが、もしあれば、ヘッドフォンとマイクをオーディオジャックに接続する必要があります。

音に関する機能を使うときに追加でセッティングが必要になるという欠点はありますが、内蔵マイク、ヘッドフォンを用意しないことでヘッドセットの価格を下げるという戦略の一部とも考えられます。

トラッキング性能


AcerのMRヘッドセットはインサイド・アウト方式のトラッキングを採用しています。これにより、RiftやViveのようにセットアップ時に外部センサーを周辺に置く必要がなくセットアップが簡単になりました。このインサイド・アウトには、よりマイクロソフトのHoloLensの技術を継承していると思われ安定したトラッキングを実現しています。

実際のデモでは、移動時にわずかにジッター(乱れ)を感じましたが、ほとんど気になりませんでした。ヘッドセットの前面にある二つの外向きのカメラは、HoloLensとほぼ同じ方法で周辺の現実環境をマッピングし、その空間のどこにいるのかを推定しています。このインサイド・アウト方式と呼ばれるトラッキング手法は体験エリアをマッピングした時と、トラッキングするときで周囲の構造が変わってしまうとトラッキングが破綻してしまう可能性があります。しかし、多くの人が動き回っているデモ会場でもトラッキングができていたのはとても感動しました。

また、Viveの「Chaperone」システムのように体験中に現実物との接触を避けるためのモードもありました。このモードのセットアップを開始して体験エリアを動き回ると、周囲のものにぶつからないように、体験エリアを示すボックスを素早く作成できます。その後、デモコンテンツを起動すると、ボックスの境界に近づくにつれて上図のような青い点で表現された壁を表示し、現実物との接触を避けることができます。

デモコンテンツ&Windows Mixed Reality

マイクロソフトガ提供するWIndows Mixed Realityは、ユーザーが3D仮想空間において2D Windowsアプリケーションを利用する環境を提供しています。また、サードパーティが開発した3Dアプリケーションを飛び出すように表示したり、まったく異なる仮想空間へ移動することができます。

マイクロソフトは、AcerのようなWindows Holographic互換ヘッドセットを作成するために、多くのPCベンダーと協力しています。このようなヘッドセットはWindowsのエコシステムに依存することになるため、OculusやSteamVRといったハイエンドのVRコンテンツが揃っているストアからゲームを入手する公式な方法はありません。

まだ改善の必要なホームアプリ『クリフハウス』

Windows Mixed Realityのデモの一つは、上図で紹介している『クリフハウス』と呼ばれるアプリケーションです。クリフハウスは、異なるWindowsアプリケーションやコンテンツをカスタマイズするためのホームとなるアプリケーションです。

クリフハウスは、Windows Mixed Realityのホームアプリとしてよくできていると感じました。ただ、ハウス内や外の背景で動いているものがなく家の中にいるという臨場感は生まれませんでした。また、ハウス内の移動も洗練されていなく、より簡単に説明がなくても動き回れるようにしてほしいと感じました。

ミュージックビデオの中を“歩く”

デモの内容はほとんどが直立した状態で体験するものでしたが、Viacom NEXT社の作成した3Dミュージックビデオを体験するデモはルームスケールトラッキングを生かして動き回ることができるデモでした。このデモは、ミュージシャンであるマックス・フロストをマイクロソフトのHolocaptureシステムを使って撮影し作られていました。

https://www.youtube.com/watch?v=kZ-XZIV-o8s

Holocaptureシステムで作られた人物の3次元キャプチャーのクオリティは今まで見た他のデモよりも優れていました。過去に複数のKinectセンサーを使い3次元キャプチャーをする手法などがありましたが、今回のデモで見たのは別次元のクオリティでした。このデモの体験中、体験エリアを色々と動き回りましたが、安定してトラッキングしていました。

ここまでデモを通しては、二つのことに気づきました。一つ目は、眼鏡を着用していても快適に装着できること。二つ目は、ケーブル長が3.6mから4m程度と体験エリアで設定された広さのぎりぎりのところでは長さが若干足りなくなり、ケーブルが張っていたことです。参考までにViveのケーブルはPCからヘッドセットまで約5.8m(リンクボックスを含む)、Riftは約4mでした。

高画質な360度動画の視聴にも

もう一つ感激したデモは、Pixvana社のVRビデオがAcerのヘッドセット上で動いているデモでした。Acerの高解像度パネルはHQ 360度ビデオ体験にとても役立っていました。デモの際、ビデオの実際の解像度は分かりませんが、Pixvanaによると12kの解像度でストリーミングできるということでした。Pixvanaは最近Valve社と提携を発表しました。この提携にはSteam 360ビデオプレーヤーの核となる技術が含まれており今後の展開に注目です。

開発者は概ね好意的な印象

同じデモに参加していた参加者の意見を聞いてみると総じて好意的な意見でした。もっとも嬉しかった点としては、外部センサー不要で簡単にセットアップしてヘッドセットのトラッキングができる点でした。また、価格が300ドル以下という安価に設定されたのも喜ばれていました。これによってVR開発用の機材のハードルが下がり、より多くの人がVR開発に参加して活性化するのではないかという意見がありました。

ケーブルについても、HDMIとUSBケーブルが一緒になったスリムケーブルになった点が好印象だったようです。スリムケーブルは下図のようにPCに接続する直前に2つに分かれます。

ヘッドセットへの疑問として挙げられたのは、IPD(瞳孔間距離)をどのようにセットするかでした。このIPDを適切に設定することで立体視を快適に行えるだけでなく、疲労などの防止につながります。HoloLensではIPDの調整をソフトウェア内で行えますが、AcerのMRヘッドセットも似たような方法があると考えられます。もしAcerのヘッドセットのレンズが動かせないと、正しいIPDで体験できず没入感が損なわれる可能性があります。

対応するVRコントローラーについて

会場では、多くの人が同時に発表されたマイクロソフトのVRコントローラーについて興味を持っていました。現時点では、AcerのVRヘッドセットとコントローラーのバンドル版(400ドル)の発売は今年の後半以降になるとのことでした。VRコントローラーだけを購入することもできるようになるとのことでしたが、いつになるかは分からないという回答。

今回のカンファレンス上でのデモではXboxコントローラーが用いられていましたが、マイクロソフトの次世代ゲームコンソールである「Project Scorpio」とWindows Mixed Realityヘッドセットがどのように組み合わさるかについても要注目です。

コントローラはヘッドセットの前方にあるカメラを主としてトラッキングに使用しますが、IMUを含む他のセンサーやインバースキネマティクス(逆運動学:IK)アルゴリズムも使用するということでした。コントローラーがヘッドセットのカメラのトラッキング範囲外に移動すると正確な位置は分からなくなりますが、他のセンサーとIKアルゴリズムを使うことである程度の位置情報は取得できるとのことです。

コントローラーは”プラットフォーム互換コントローラー”であり、すべてのOEM製品に適用されるとのことでした。従って、いずれかのコントローラーを購入すれば、どのメーカーのWindows Mixed Realityヘッドセットでも問題なく動作するはずです。しかし、現時点ではHoloLensとは互換性がありません。

(参考)
Hands-on: Acer VR Headset for Microsoft’s Mixed Reality Platform – (英語)
http://www.roadtovr.com/acer-vr-headset-microsoft-mixed-reality-hands-on/

MoguraVRはRoad to VRとパートナーシップを結んでいます。

 
 

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この記事を書いた人

  • あつぽん

    日本でMRシステムの開発に携わった後アメリカへ渡り、VR/MRシステムを企業へ導入するための検討・開発に従事。現在は日本在住。

    人間の能力そのものを拡張させるテクノロジー「ヒューマンオーグメンテーション」のコンセプトに惹かれ、その界隈の動向に強い関心を持っています。その中で実用化フェーズにあるVR/MRの盛り上がりをより広い範囲へわかりやすく伝えていきたいと思っています。

    Twitter:@atupon

    Blog:http://nybiboroku.info/

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