数字とキーワードで振り返るVR/AR/MRの2017年

2016年はPlayStation VR(プレイステーションVR、PSVR)やOculus Rift、HTC Viveが発売され、VR元年と呼ばれました。つい現実を忘れてしまうようなハイエンドなVR体験が一般家庭でも可能になった年であり、普及のための一歩を踏み出した1年でした。

VR2年となる2017年はどのような年になったでしょうか。VRは堅調に様々なニュースが続き、さらにARの話題も増えてきました。そんな2017年を本記事では数字やキーワードで振り返っていきます。

投資:25億ドル

25億ドル(約2,800億円)という数字は2017年にVR/ARへ投資された金額の合計です。この数値はイギリスのDigi-Capitalが2017年11月末までの集計結果として公表したもので、12月の資金調達の実績がさらに追加されることになります。

四半期ベースでのVR/AR領域への投資額。2017年第1四半期から第4四半期は一番右の4本の棒グラフで示されている。

シードステージでの投資も行われていますが、シリーズA〜シリーズCまで投資の段階は様々です。また、『Job Simulator』などのOwlchemy Labsはグーグルに買収されています。

投資額が多かったスタートアップをピックアップすると以下のようになります。企業名のリンクから各調達のニュース記事を見ることができます。

企業名(国名)

調達金額

事業

時期

Magic Leap(米国)

5億ドル

ARヘッドセット開発

10月

Improbable(イギリス)

5億ドル

VR向けサーバーシステム開発

5月

Niantic(米国)

2億ドル

ハリーポッターをテーマにしたARゲーム開発

11月

Lytro(米国)

6,000万ドル

ライトフィールド技術開発

2月

Leap Motion(米国)

5,000万ドル

ハンドトラッキング技術開発

7月

Within(米国)

4,400万ドル

360動画制作&プラットフォーム

7月

Dreamscape Immersive(米国)

3,000万ドル

ロケーションベースVR向け開発

12月

8i(米国)

2,700万ドル

人体の3Dスキャン&ホログラム技術

2月

Nearpod(米国)

2,100万ドル

教育向けVR開発

3月

Pimax(中国)

1,500万ドル

8K・広視野角VRHMD開発

12月

また、VR業界における主要なプレイヤーの数も順調に増加しています。アメリカのThe VR Fundが公開している業界図の2017年下半期版もぜひご覧ください。

一方、VR/ARの事業を中断したり、サービスを停止する企業もありました。コンシューマー市場の立ち上がりが鈍いことが影響したサービスもあった模様です。特にAltspaceVRとCCP Gamesに関しては、Oculus Riftの開発者版の頃からの非常に早期にVRへの取組を始めていた企業です。

企業名(国名)

状況

事業

時期

Envelop VR(米国)

サービス終了

VRデスクトップ環境開発

1月

CastAR(米国)

閉鎖

ARデバイス開発

6月

AltspaceVR(米国)

終了(→MSに買収)

ソーシャルVR

7月

CCP Games(アイスランド)

VRスタジオ閉鎖

VRゲーム開発

10月

ノキア(フィンランド)

撤退

360度カメラ開発

10月

また、日本国内でもグローバルに比べると小規模ですが、VR/AR分野への投資が行われました。調達額不明のスタートアップもありますが、判明しているだけでも合計額は21億円を超えています。ファンドの動向としては、コロプラが5,000万ドルでVR向けファンドの第2弾「Colopl VR Fund 2」を設立、アカツキが総額56億円のAR/VR/MR向けファンドを設立します。

2017年、国内における代表的な資金調達事例

企業名(国名)

調達金額

事業

時期

ナーブ

4.6億円

VRソリューション提供

10月

ジョリーグッド

4億円

VR×AIソリューション

11月

クラスター

2億円

ソーシャルVRプラットフォーム

5月

H2L

2億円

触感型コントローラー開発

2月

ダズル

2億円

VR解析ツール開発

3月

Holoeyes

1.5億円

医療系VR/MR

6月

GITAI

1.4億円

ロボットとVRでテレプレゼンス

12月

Tyffon

1.1億円

ロケーションベースVR

10月

ハコスコ

1億円

360度動画配信プラットフォーム、ソリューション提供

7月

Synamon

5,000万円

ソーシャルVRソリューション

11月

ディヴァース

40万ドル

3DCADのVR内表示など

7月

市場:200万台

投資・業界サイドからは、立ち上がりが遅いとの声もあったVR市場は期待どおりにいかなかった側面もありますが、堅調に推移したとも言えます。

ハイエンドVRヘッドセットのうち、売上が積極的に公開されているのは2016年10月に発売されたPlayStation VR(プレイステーションVR、PSVR)くらいですが、6月に100万台、12月に200万台の全世界出荷台数が発表されています。

Oculus RiftやHTC Viveの出荷台数は推計値しかなく、全体像を見通すことが難しい状態ですが、2017年末時点では各100万台近くに到達しているのではないかと考えられます(Superdataの推計及びCanalysの推計より算出)。

出荷台数が堅調に伸びている背景としては、各ヘッドセットの値下げやセールが多く行われたことが挙げられます。Oculus Riftに関しては実質半額以下に値下げに、HTC Viveは2万円長の値下げに、PSVRは価格据え置きながらカメラが同梱となりました。

2017年後半にはMicrosoftが展開するWindows Mixed Reality対応のPC向けヘッドセットがAcer、Lenovo、DELL、HP、富士通から発売され、センサー不要でハイエンドなVR体験が可能になっています。

また、ソフトウェアの販売では、各ストアのソフト本数を合計するとすでに数千本が配信されており、中には『Job Simulator』、『Raw Data』などのように1億円以上の売上を達成するものが現れています。『Fallout 4 VR』、『MONSTER OF THE DEEP:FINAL FANTASY XV』など世界的に注目を集めたゲーム作品に関連するVRゲームも登場したほか、国内では『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』や『傷物語VR』など国内の人気ゲーム・アニメの世界をVRで楽しめる無料VRデモも配信され、話題となりました。

スマートフォンなどで楽しめる360度動画は有料配信プラットフォームDMM VRが開始から1年で年商20億円を達成しています。売上が集まっている分野としてアダルトVRにも非常に注目が集まりました。

360度動画に関しては撮影用の機材の進化が早く、特に中国のInsta360からはプロ用の8K3D撮影が可能なInsta360 Proや360度動画から通常の動画を作るなどの機能を搭載したInsta360 ONEが登場しています。

2018年にはOculus Goなどの安価で高品質な一体型VRヘッドセットの登場も予定されており、消費者市場はさらに拡大することが見込まれます。

注目分野:ロケーションベースVRとビジネス利用

コンシューマー市場がゆるやかな立ち上がりを見せる中、国内外で大きな盛り上がりを見せた2つの分野がロケーションベースVRとビジネス分野でのVR/AR活用です。

ロケーションベースVR

ロケーションベースVRは、いわゆる施設で体験するタイプのVRコンテンツです。

バンダイナムコエンタ―テインメントは7月に新宿・歌舞伎町にVR専用施設VR ZONE SHINJUKUを開設し、エヴァンゲリオン、マリオカートなどの有名作品に絡めたVR体験を多く提供しています。神戸を始めショッピングモール等でも展開を開始し、2017年末には国内20箇所、国外1箇所に体験コーナーを設置しています。2016年末に渋谷に「VR PARK TOKYO」を開設し、好調な売上をあげているアドアーズは池袋、札幌に相次いで開設しています。

セガ、タイトー、カプコンなどのアーケードゲーム事業者も相次いで運営店舗でのVR体験の導入を始めているほか、ハウステンボスやユニバーサル・スタジオ・ジャパン、としまえんなどのテーマパーク、ネットカフェ、イオンなどのショッピングモールなど様々な場所でのVR導入が進んでいます。コーエーの「VRセンス」のようにゲームセンター等で手軽に導入できるシステムを開発されています。

業界団体として一般社団法人ロケーションベースVR協会も立ち上がっており、2018年も成長が見込まれます。

ビジネス分野でのVR/AR活用

VRは、危険作業のシミュレーションや業務のトレーニング、3Dデータの有効利用などに最適なツールですが、その導入事例が国内外で一気に増えたのが2017年でした。また、マイクロソフトが1月から国内展開を開始したMRデバイスHoloLensを使った事例も多く登場しています。

数が多く紹介しきれないため、Mogura VRの「ビジネス・投資」から個別事例はご覧ください。

台頭:モバイルAR

もう一つ注目が集まったのが「AR」(オーグメンテッドリアリティ、拡張現実)でした。マイクロソフトのMRデバイスHoloLensが専用デバイスとして登場し、現実空間にデジタルなオブジェクトを配置を固定することができる、まさに“混合”現実を提案しています。HoloLensは1月に国内発売されて以来、ビジネス分野活用事例が増えてきています。

高価な専用デバイスが必要とされる中、通常のスマートフォンのカメラを使って簡易的にARをより現実になじませるプラットフォームが相次いで登場しました。アップルは9月から展開するiOS 11に「ARKit」と呼ばれる機能を搭載しました。また、グーグルはAndroid向けに「ARCore」を展開することを発表、スナップチャットやフェイスブックはSNSアプリ内のカメラにAR機能を搭載しています。

将来的に実現する眼鏡型デバイスで体験するARへの第一歩と考えられますが、その穴を埋めるために現実空間に固定した3Dオブジェクトを誰でも同じ位置で見えるようにするための「ARクラウド」という技術にも注目と資金が集まっています。

その他にも話題に事欠かなかった2017年

国内外のVR業界ではほかにも様々なことがありました。筆者個人として印象深かったのは、Oculusの発明者でもあり、Oculus VR(現Oculus)の創業者パルマー・ラッキー氏の退職と来日です。

現在のVRのムーブメントの立役者であるラッキー氏は、2014年にOculusを20億ドルでフェイスブックに買収された以降もフェイスブック内で働き続けていましたが、2017年春に退職、その後、自身で新たなスタートアップを立ち上げています。

筆者は退職直後に日本を訪問していたラッキー氏にロングインタビューを行い、フェイスブック退職後の同氏の考えをたっぷりと聴きました。2017年12月末時点でも色褪せることのない、非常に興味深い話でした。

また、2017年末には「バーチャルYouTuber」が脚光を浴び、急激に人気を集めつつあります。最もYouTubeでのチャンネル登録者数の多いキズナアイは1,185,897 人の登録者を誇っています。2017年12月31日15時時点で、ヘッドセットを使用したVRではありませんが、「現実ではないキャラクター姿の自分をまるでYouTuberのように見せる」バーチャルYouTuberはまさにバーチャルであり、一種のVRだとも考えられます。2016年初にGOROman氏が実験的に同様の取組を試みて以来、ようやく花開いたようにも見えます。

2016年ほどハードウェアの発売が大きく盛り上がった1年ではありませんでしたが、同じかそれ以上に全体の盛り上がりが大きかったというのが振り返ってみての感想です。

毎年盛り上がり続けているVR/AR。2018年に何が起きるのか非常に楽しみです。2018年の行方に関しては年明けに掲載予定です。

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この記事を書いた人

  • 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。VRジャーナリスト。
    VRが人の知覚する現実を認識を進化させ、社会を変えていく無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。VR/AR業界の情報集約、コンサルティングが専門。また、国外の主要イベントには必ず足を運んで取材を行っているほか、国内外の業界の中心に身を置きネットワーク構築を行っている。

    Twitter:@tyranusii

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